12月5日

 文明を問わず古代宗教の祭壇では香木や樹脂がたかれました。神と人の仲だちには香りの煙が必要とされました。願いや祈りは香りにのって神々に届くと考えられていました。香水の語源はper fumum(煙を通して)というラテン語で水とは関係ありません。古代国家でまつりごとを行うものは香煙によって荒ぶる人々の心を和らげ、平伏させたのです。
 香料は政治支配の小道具だったのでは、と考える人もいます。その芳香樹脂の代表が「乳香」で昔から貴重で高価なものでした。東から来た博士たちは「幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた」(マタイ二・一一)のです。
 乳香は現代でも北東アフリカ、ソマリアあたりで産出されます。乳白色の塊で、薫じると澄んだ甘さと松脂(まつやに)のような香りがします。軽いめまいを感じさせる香り、とでもいえましょうか。旧約時代には、儀式の素祭に添えました(レビ二・一、二、一五、一六、六・一五)。また一般の供え物ともされ(エレミヤ一七・二六、四一・五。イザヤ四三・二三、六六・三)、供えのパンの上に置き(レビ二四・七)、神殿にはこれを納める部屋がありました(第一歴代九・二九。ネへ一三・五、九)。
 黙示録でいうローマは当時のバビロンをさします。が、ここではぜいたくな輸入品の一つでありました(黙示一八・一三)。