11月26日

 マタイ一〇・一六には十二弟子派遣に際して、イエスの訓示が記されてあります。ガリラヤ湖畔の愚直な漁師たちを伝道に這わすことは、ちょうど羊を狼の中に送り出すようなものでした。正直一辺倒の彼ら、学問もなく、権力も、何の後楯も無い彼ら、特に無抵抗主義を教えられている彼ら、もちろん戦うなんらの武器もない彼ら、それは温順な羊そっくりでありました。しかし、これに反して世の人たち、殊に学者、パリサイ人たちの悪だくみ、権力、横暴さは正に狼でありました(ヨハネ一〇・一二、使徒二〇・二九)。
 羊である彼らはどのようにして、この狼のような連中と戦うのでしょうか。イエスは教えていわれました。「蛇のようにさとく、鳩のようにすなおでありなさい」(マタイ一〇・一六)と。この世は現代でも悪賢い、だまそうとするサタンのような心をもった者たちが少なくないのです。ですから、つまらない事でだまさ れないように賢く、利口に、よく注意して福音を説き、そしてなお愛の実践をなしてゆかねばなりません。
 キリストの福音は必ずしも人々に歓迎されるとは限りません。大衆の多くは「自分につごうの良いことを言ってもらうために、気ままな願いをもって、次々に教師たちを自分たちのために寄せ集め、真理から耳をそむけ、空想話にそれて行くような」(第二テモテ四・三~四)危険性があります。十分注意したいと思います。