9月10日

 詩篇七一篇は老いたる者の祈りです。作者は「神なる主よ。あなたは、私の若いころからの私の望み、私の信頼の的です」(五節)と告白しています。そして危機の中で「年老いた時も、私を見放さないでください。私の力の衰え果てたとき、私を見捨てないでください」(九節)とも叫んでいます。信仰を持って生涯を貫いた一老人の祈りです。
 信仰者は危機の中にあって、まず一節から三節で「助けてください」「救ってください」と祈っています。年齢に関係なくヤーウェなる神を信じるものでも人生には様々な形で「危機」は訪れます。ましてや老いたるものにとって年齢を重ねてゆくことは、体力の減退を意味します。また気力も徐々に失せてゆくなど、社会生活に夕暮れ時を実感ぜざるを得ません。そんな中に将来への希望も失い、生き甲斐ももてずして、心に動揺を覚えて自らの手で生命を絶とうという誘惑にかられることも無いとはいえないでありましょう。一七節から二十節では、若い頃から受けた神の恵みが、未来への希望の根拠となる言葉を吐いています。「私を再び生き返らせ、地の深みから、再び私を引き上げてくださいます」(二〇節)と。
 旧約の詩人は幸いに創造者なるまことの神を信じていました。故に彼は「私の口には一日中、あなたの賛美と、あなたの光栄が満ちています」(八節)と勝利しています。このような真実の信仰を持って人生の危機を何度も乗り越えてゆきたいものです。