6月25日

 伝道者(コーヘレス)の書は、冒頭から「空の空。すべては空。日の下で、どんなに労苦しても、それが人に何の益になろう」(伝道一・二~三)と虚無感を告白するところから始まっています。この書の著者は栄華を極めたソロモンでありましょう。すべてが空しいことよ、の語句は、一・一四、ニ・一、一一、一五、一七、一九、二一、二三、二六、四・一六などにも繰り返されています。
 即ち、第二章を読んでもわかりますように彼は快楽を経験した人物。酒に女に、事業に宴会に、そして大邸宅を建て庭と園を造り、あらゆる種類の果樹迄植えました。さらに諸州から金、銀、宝も集めました。まさに人としてやりたいことをなし、分の全てを満たした男と言ってもいいでありましょう。しかも知恵、知識も豊かに事を運んで身を滅ぼしたこともない人生の成功者が言っているのです。
 最後はやはり神を恐れつつ主なる神の戒めを守って、この神と共に歩むことが人としての本分であり、幸せだと告白して(同一二・三)この書を終っています。しかも若い日にあなたの造り主を覚えなさい(同一二・一)と勧めています。
 この虚無に満ちた世において本当の幸せがどこにあるかを教える書といっていいでありましょう。また真の神なき人生がいかに空しいかを教えてくれる書でもあります。新約の時代に生きる私たちとしても、やはりイエス・キリスト以外に真実の幸せはないのです。