6月11日

 パウロとバルナバは初代教会時代の第一回伝道旅行中、ルステラ(現在のトルコ中北部)において神の全能の力を得て、生まれながら足のきかない男を癒したのです(使徒一四・八~二三)。
 その時パウロのしたことを見た群衆は声を張り上げ、彼らをギリシャ神話の最高神ゼウスとその末子ヘルメスの名を呼んで、二人を神様に祭り上げようとしました。するとゼウス神殿祭司は雄牛数頭と花飾りを携え来て、群衆と一緒に犠牲を捧げようともしました。
 この事を聞き知ったパウロたちは 駕き叫びながら彼らの中に駆け込み、「皆さん。どうしてこんなことをするのですか。私たちも皆さんと同じ人間です」(使徒一四・一五)と言って阻止したのです。ここがキリスト教伝道者の立派なところで、普通なら自分が「神の座」に座りたい、そして民衆からひざまずかれ、拝まれたいのです。
 我こそメシヤだ、世直しの救い主だという人間が昔も今も現れるのが常です。使徒一二・二〇以下のへロデ王は神に栄光を帰さなかつたので、虫にかまれて息が絶えたとあります。私たちも心したいと思います。どんな立派なことができても、私たちは神ではないのです。神にはなれないのです。「神は高ぶる者に敵対し、へりくだる者に恵みを与えられるからです。」(第一ぺテロ五・五)ヘロデは自己を神格化する民衆の声に陶酔した故に恐るべき神の裁きを招いて「虫にかまれて」死んだのです。