5月26日

 宗教とは何ですか。世に宗教の定義は複雑多義に亘っていますが、しかし、原始末開の原始宗教から、仏教やヒンズー教・イスラム教のほか幾百幾千、現代の種々雑多な諸宗教に至るまで、その程度の高低深浅のいかんにかかわらず、全ての宗教の中核を貫く最大公約数的なものは、何等かの姿における神と人間との関係であります。
 世界に幾百千万の宗教と人間の数ほどの偶像や神々のあることは、人間がどのようにして神を尋ね求めたかということの証拠を示すものに他なりません。それらは全て「人から神へ」という姿をとります。このように宗教とは人間が神を求める工夫であり、工作であります。
 そういう観点でいえば、聖書の宗教は宗教ではありません。福音というべきであります。なぜなら旧、新約を通しての聖書の宗教は、逆に、神が人を尋ね求める様子を見ることができるからです。イエスは天の栄光の座を捨てて、人間の姿でイスラエルの地に生まれられたのです。異教が人から神への図式をたどるのに対し、聖書宗教、真実のキリスト教は神から人へ、という姿をとるのです。異教が上昇のエロースだとすれば、聖書の宗教は下降のアガペー(神の愛)といわねばなりません。
 「人の子(イエス・キリスト)は、失われた人を捜して救うために来たのです。」(ルカ一九・一〇)。