5月2日

 五千人を養う五つのパンと二匹の魚の奇蹟は、四福音書が共に記録している唯一の奇蹟であります(マタイ一四・一五~二一、マルコ六・三〇~四四、ルカ九・一〇~一七、ヨハネ六・一~一四)。従ってこれがいかに強烈な印象を与え、重要な意味をもつ出来事であったかがわかります。
 この奇蹟と次の湖上歩行の奇蹟により、ついに弟子たちは「確かにあなたは神の子です」(マタイ一四・三三)と告白することになるのです。この奇蹟はまた、神がかつて荒野でイスラエルの民をマナでもって養われたこと(出エジプト一六・四~三六、民数記一一・四~九)や、預言者エリシャによって、大麦のパン二〇個と一袋の新穀をもって百人を養い、しかも彼らが食べて残したという奇蹟(第二列王記四・四二~四四)にも類します。驚くべき出来事であります。
 しかもこの五餅二魚の奇蹟は、律法と預言の成就としてこられた方によって行われたのであります。またイエスはこの奇蹟を通して、メシヤとしてその民に与えようとしているのは物質的祝福だけでなく、霊的なものであることを示そうとされましたが、弟子たちはすぐにはそれに気がつかなかった(マタイ一六・九以下、マルコ八・一七~二一)のです。